伊勢神宮・内宮の別宮 瀧原宮

正宮に次ぐ格式高いお宮、それが別宮です。内宮や外宮の域内にも別宮がありますが、少し離れた場所にもあります。なかでも伊勢から遠く離れた瀧原宮や伊雑宮の別宮のことを「遙宮」(とおのみや)と呼びます。参拝者で賑わう両正宮参拝の後は静かで趣のある別宮をおすすめします。

内宮・外宮には内宮10か所、外宮4か所のあわせて14の別宮があります。そのうち9社が宮域外にあります。

外宮の別宮である月夜見宮以外は内宮の別宮で月讀宮(月讀宮つきよみのみや・月讀荒御魂宮つきよみあらみたのみや・伊佐奈岐宮いざなぎのみや・伊佐奈弥宮いざなみのみや)、倭姫宮やまとひめのみや、伊雑宮いざわのみや、瀧原宮たきはらのみや(瀧原宮、瀧原竝宮たきはらのならびのみや)があります。宮域外の9の別宮巡りをおすすめします。

 

瀧原宮 地元では「野後(のじり)様」と呼ばれ親しまれている瀧原宮は伊雑宮と同じく遙宮です。伊勢市西部を流れる宮川を上った先にある別宮です。

 

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紀勢自動車道大宮大台ICから遠くなく行きやすい所です。大宮大台ICを降りて国道42号を尾鷲方面へ走ること約10分、道沿いに「瀧原宮」という大きな看板が見えてきます。所要時間は内宮からですと約40分。下道ですと約60分。車でも遠いと感じます。昔の人たちは徒歩ですから約9時間!

 

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三重交通が運行している南紀特急バス(松阪行きと津行き)と名古屋高速バス(名古屋駅名鉄バスセンター行き)に共に瀧原宮前バス停が有ります。バスの本数はどちらも少ないですが、瀧原宮前にバス停がありアクセスには便利です。

 

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道の駅奥伊勢木つつ木館とコンビニの前に大駐車場があります。

 

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「瀧原宮まで600m」とのことなので、ここに駐車し歩いて向かいました。

 

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瀧原宮まで到着する前に樹齢千年くらいはあるような立派な大楠がお出迎えしてくれて既にワクワクが始まります。

 

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「瀧原宮」の鳥居に到着。鳥居の手前にも身障者用などの駐車場が少しあります。

 

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衛士見張所横にトイレがあり境内にはないのでこちらでお済ませ下さい。

 

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一礼をして、鳥居をくぐります。参道の長さは、約600メートル。

 

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大きな杉の木が立ち並ぶ参道。空気が澄んでいて歩いていると、心安らかな気持ちになります。おかげ横丁などでにぎわっている内宮とは違いまったく観光客がいません。内宮よりは規模は小さいながらも木は太く荘厳な雰囲気が漂う参道です。14時頃訪れましたが是非とも更に静かな早朝参拝してみたいです。(実際、内宮は伊勢湾台風で神宮杉の多くを失ったそうです。瀧原宮では被害が小さかったため、内宮より巨木が目立つようになったようです。)

 

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荘厳さとともに、周辺の自然と、奥まで続く参道が織りなす風景が美しく、思わず足を止めて見とれてしまいます。所々でベンチも設置されており休むことができます。

 

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 どこまでも綺麗に清掃された参道では遥かとおい昔からこの聖地を見守り続けてきた森が迎えてくれます。

 

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 参道を進み小さな橋を渡ると・・・

 

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「御手洗場」という看板があります。

 

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参道沿いに手水舎もありますが、ここはぜひとも御手洗場に進みましょう。

 

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階段が下の方へつながっているので、行ってみましょう。階段を一段進むごとに涼しくなってきます。

 

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行き着いた場所には、清らかな水が流れる川があります。参道と並ぶようにして流れる「頓登川(とんど)」です。宮川の上流に注ぐ大内山川の支流です。

 

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 ここには「気」が流れています。瀧原宮がパワースポットかどうかは分かりませんが、完全に空気が違います。ピリッと身が引き締まるような空気感と、緩やかに穏やかに流れる時を感じます。昔ながらの禊ぎの作法でここの川で身を清めてからお参りします。

 

内宮では五十鈴川の川岸が「御手洗場」となっていますが、それと同じです。ここも山を背後に南面しており前方に川が東から西へ流れる地勢から内宮の雛型になったともいわれています。その様なことで内宮とどこか似た雰囲気を感じます。

 

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「宿衛屋」の真後ろに御手洗場があります。 御手洗場から見上げてみました。

 

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御手洗場から参道に戻る途中で不思議な石があります。ジブリ作品に出てきそうな大杉に包まれた人型の石があります。

 

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Zoom up !

 

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また祭壇のようなものもあります。

 

 

御手洗場の近くにある宿衛屋と忌火屋殿

 

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宿衛屋 お札やお守、御朱印などを受けることができる場所です。瀧原宮の由緒や歴史が紹介されたパンフレットも配布されています

 

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忌火屋殿 忌火とは清浄な火という意味です。御火鑽具(ひきりぐ)を用いて昔ながらの方法で火を起こし神様のお供えを作るところです。

 

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祓所 宿衛屋と忌火屋殿を少し進むと祓所です。注連縄が巡らされており中には入れません。

 

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樹齢数百年を数える木立に囲まれる参道はまだまだ続きます。木々一本一本に個性があり飽きません。

 

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ねじれ杉 瀧原宮は有名な分杭峠(長野県)と同じくゼロ磁場とも言われています。その影響で木の皮がねじれているとも言われています。幹全体がまっすぐに「ねじれ過ぎ」てます!

 

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何か動くものが・・・。大木の上にニホントカゲもいました。

 

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濃い森の中で視界が一気に開ける場所まで来たら、社殿までもうすぐです。瀧原宮全貌が見えてきます。白と黒の玉石が整然と敷き詰められています。

 

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広々とした古殿地には瀧原宮と瀧原竝宮が並んでいます。

 

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宮域には瀧原宮(たきはらのみや)と瀧原竝宮(たきはらならびのみや)の2つの別宮のほか瀧原宮所管社3社(若宮神社、長由介神社、川島神社)の計5社あります。川島神社は長由介神社と同座しているので社殿は4社です。参拝の順番は設置の看板に記載されています➀瀧原宮②瀧原竝神社③若宮神社④長由介神社(川島神社)の順番です。

 

瀧原宮

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瀧原竝宮

 

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瀧原宮と瀧原竝宮 御祭神は、ともに天照坐皇大御神御魂(あまてらしますすめおおみかみのみたま)です。これは、天照大神をお祀りしている伊勢神宮の内宮と天照御大神の荒御魂をご祭神とされている内宮境内にある別宮の荒祭宮と同じ形態です。瀧原宮、瀧原竝宮の二宮に御魂を並べてお祭りするのは、その古い姿と言われているそうです。瀧原竝宮は皇大神宮儀式帳(804年)などには記されていますが延喜式神名帳(927年)当時の官社に指定された全国の神社一覧には記載がなく不明な点が多く様々な解釈がされています。

 

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瀧原宮と瀧原竝宮の両別宮の社殿は並んで建っています(東が瀧原宮、西が瀧原竝宮)大きさは同じ規模です。両宮の間に、そびえ立つ巨大な杉。社殿との対比でもその大きさが分かります。

 

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 続いては、瀧原宮の東側の石段を上がったところにある「若宮神社」へ。

 

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若宮神社は瀧原宮の所管社です。御祭神は若宮神です。瀧原ゆかりの水神とされます。

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最後は、「長由介(ながゆけ)神社」です。こちらも瀧原宮の所管社で、同じく所管社である「川島神社」が同座されています。長由介神社御祭神は長由介神です。瀧原宮の御饌を司る神といわれていて昔は長寿祈願に訪れる人も多かったそうです。「ながゆけ」の音が「長生き」に通じるとして江戸時代には長寿を祈願する参拝者で賑ったそうです。

川島神社は長らく社地が不明でしたが明治に入ってから長由界神社と同座することで再興されました。御祭神は川島神です。

 

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 輝く苔の奥に見えるのが御船倉(みふなくら)です。瀧原宮の最大の特色としては御船倉があることでしょうか。瀧原竝宮の西側の古殿地横にある御船倉は「御船代」を収納する倉といわれています。御船代とは、ご神体が納まる御桶代(みひしろ)をさらに納める船形の器です。古代以来、瀧原宮が宮川の水上交通を象徴するという説もあります。現在、伊勢神宮の内宮・外宮をはじめ他の宮社にはなく、瀧原宮のみにある建物です。

 

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二拝二拍手一拝、感謝の気持ちを伝えます。順序通り、参拝をしたことで、清々しい気持ちになりました! 参拝中も川のせせらぎが聞こえてきました。社殿前の林の奥を覗くと頓登川とそこに落ちる瀧が見えました。この辺りは水の豊かな所で四十八もの滝があるそうで瀧という名前もそのことに由来しているとも言われています。

 

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景観に配慮し放水栓は原色の赤ではなく自然色です。

 

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 境内の入り口には瀧原宮大祭運営委員会による「瀧原宮の起源」がイラスト付き看板であります。子どもや若い世代がここの歴史を分かりやすくなっています。その歴史は古く、約二千年前まで遡ります。第11代、垂仁天皇の皇女の倭姫命(垂仁天皇の娘)が、奈良を出発し宮川下流の磯宮(いそのみや)より天照大御神を祀る地を探すために上流へ遡ったところ、宮川支流『大内山川』の流域に「大河の瀧原の国」という美しい場所があったので、草木を刈り新宮を建てました。だが天照大御神の神意により、現在の内宮のある伊勢市宇治館町に新宮(五十鈴宮)を建てたため、天照坐皇大御神御魂(あまてらしますすめおおみかみのみたま)を祀る別宮となったとされます。瀧原宮は、まさに現在の伊勢神宮(内宮)のルーツの源と言っても過言ではなく、格式の高い神社であることは言うまでもありません。倭姫命は伊勢市宇治舘町に内宮を創建しましたがそれまでに天照大御神お祀りした地は「元伊勢」と呼ばれています。元伊勢の地名は各地に残っていますがその中で別宮が創建されたのはここだけです。

 

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こちらは伊勢神宮設置の由緒書きです。 

 

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イラスト付き看板や由緒書きを読めば今まで歩いてきた神代の昔に誘うような深い森の参道に納得です。

 

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瀧原宮は内宮から高速道路で約40分。伊勢神宮125社の中で最も遠い場所です。せっかく瀧原宮まで足をのばしたのなら瀧原宮から約6キロ手前の内宮摂社の多岐原神社(たきはらじんじゃ)もぜひ訪れて下さい。こちらはタキハラ宮ではなくタキハラ神社です。急流の瀬に渡りあぐねていた倭姫命を真奈胡神が助けたことから命が社を定めたと伝わるこちらも古社です。うっそうとした森の中にひっそりと鎮まっています。川のせせらぎと鶯の音が境内に響く癒しの社です。

 

 

  

おまけ 

 

滋賀県の坂田神明宮も「元伊勢」の一つです。倭姫命がこの地に2年間滞在したと伝わっています。

 

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瀧原宮

住所 〒519-2703三重県度会郡大紀町滝原872 電話番号0598-86-2018 参拝時間:午前5時から午後6時まで。(参拝停止時間は5月から8月までは午後7時まで、10月から12月までは午後5時まで)お札や御朱印のお取り扱いもしています。アクセス お車 紀勢自動車道大宮大台IC下車約10分。三重交通バス「瀧原宮前」バス停留所から徒歩5分。