125社めぐり 小俣編
125社めぐり 小俣編 お参り10社
「お伊勢さんほど御大社はないが、なぜに 宮川 橋がない」と世にうたわれた宮川。洪水の多い川でしたが明治まで橋がなく旅人は渡し舟で伊勢に入りました。宮川の西側にある小俣町。古代以来の斎王の離宮院や渡し場として栄えた参宮街道の町は伊勢たくあん、へんば餅、伊勢根付など名物を産んだ町でもあります。
清野井庭神社きよのいばじんじゃ
豊受大神宮摂社 祭神、草野姫命かやのひめのみこと
【清野井庭神社】 三重県伊勢市常磐一丁目8番
清野井庭とは清い野に井庭、田畑に水を引き入れる堰の神です。清野とは山田原の一部でこのあたりのことです。この地の灌漑用水の神を祀っています。一説には屋船の神のご分霊を祀るとも伝えられています。
清之井公園が横にあります。
125社めぐりではあまり見ない玉垣です。地元の神社と勘違いして素通りしてしまいました。草奈伎神社、大間国生神社と100m程離れた地で祀られています。
無骨な手水鉢
田畑に水を引き入れる堰の神ですが周辺は駅や横浜ゴムの工場もあり見守っていたであろう光景は今はありません。
宇須乃野神社うすののじんじゃ
豊受大神摂社 祭神、宇須乃女命うすのめのみこと
同座 縣神社あがたじんじゃ
豊受大神末社 祭神、縣神あがたのかみ
【宇須乃野神社・懸神社】 三重県伊勢市御薗町高向字南世古2653
祭神は五穀の神です。宇須野とは山田原の原野の一つです。同座の縣神は地元、高向の上田の守護神として祀られ宇須野の水田の関りの深い神社です。かつてはこの辺り、御園村と称し田園地帯でした。地名どおり神宮御園が宮川の川原に沿って広がっていました。
社地は狭いですが境内に樹齢1000年の大楠が堂々と茂ります。
草奈伎神社くさなぎじんじゃ
【草奈伎神社】 三重県伊勢市常磐一丁目5番
社名から三種の神器の草薙の剣を連想するが、垂仁天皇の時代、越の国、新潟にのさばっていた荒くれもの阿彦を後記する大若子命が御剣仗を賜って平定したと伝わり、その御剣を祀ります。ご神体の由緒そのものの名称を社名にしているところは神宮摂社・末社でここだけです。外宮第一位の摂社です。内宮第一位の摂社、朝熊神社と同じく伊勢神宮で行われる大祭、三節祭には深夜の儀式「宵暁の儀」に準じた神事が行われます。
125社めぐりでは珍しい黒石の石垣です。
境内入口には立派な蕃壁(ばんぺい)が立ちます。尊い社殿を直視しないとか不浄なものの侵入を防ぐためのものとされています。
蕃壁の直線的な長方形の姿はカステラのようです。
個人的に好きな形の手水鉢。岩をくり抜いて野味に溢れます。
広い敷地内に2つの摂社が祀られています。向かって左が草奈伎神社(東側)、右が大間国生神社(西側)です。
外宮第一位の摂社、草奈伎神社
大間国生神社おおまくなりじんじゃ
豊受大神宮摂社 祭神は二柱、大若子命おおわかこのみこと 乙若子命おとわかこのみこと
【大間国生神社】草奈伎神社境内
大間とはこの辺りの地名の大間広からとった社名です。
垣根の中に二社鎮座しています。右の大間社は大若子命を祀り、左の国生社は乙若子命を祀ります。両方とも伊勢国造であった天日別命の子孫で大間広と呼ばれたこの地を開拓された神です。
志等美神社しとみじんじゃ
豊受大神宮摂社 祭神、久久能智神くくのちのかみ
【志等美神社】 三重県伊勢市辻久留一丁目13番
祭神は日本神話にもでてくる木の神、久久能智神です。伊勢両宮曼荼羅図に描かれています。蔀(しとみ)平安時代から住宅や社寺建築において使われた、格子を取り付けた板戸と同じ社名です。
志等美神社の御垣内に大河内神社も鎮座しています。
木の神、久久能智神を祀る神社。社殿の前も木が茂ります。
大河内神社おおこうちじんじゃ
豊受大神宮摂社 祭神、大山祗神おおやまづみのかみ
【大河内神社】志等美神社境内
祭神は宮川堤防の守護神です。志等美神社の御垣内にご鎮座。大河内神社は伊勢両宮曼荼羅図に志等美神社と共に描かれています。描かれている社は125社の摂社・末社の内、4社しかありません。あとの2社は饗庭橋姫神社と内宮の中の大山祇神社です。大河内神社も祭神は大山祇神ですから内宮・外宮の各大山祇神がこの曼荼羅に描かれています。
社殿は別で志等美神社の御垣内に大河内神社が鎮座しています。
打懸神社うちかけじんじゃ
豊受大神宮末社 祭神、打懸名神うちかけみょうじん
【打懸神社】志等美神社境内
社名の内懸の懸は初穂を束にして神前に捧げる「懸税」の「かけ」とされています。祭神は五穀の豊作を守る神です。
宮川の堤防守護された功績により大河内神社と志等美神社、打懸神社が平安時代の1128年に従四位下という神位が贈られています。神宮摂社・末社の中で神位を贈られているのは、これら3社のみです。
志等美神社・大河内神社の向かって右側(西側)に独立した御垣内に打懸神社がご鎮座されています。
社殿前には「となりのトトロ」などで登場する昔懐かしい手押しポンプの井戸があります。
志等美神社・大河内神社・打懸神社は地元の氏神である上社と同じ社地に祀られています。上社には橿原神宮遙拝所やお稲荷さん、撫石などいろいろあり河原淵神社横の船江上社のようです。
上社の主祭神は久久能智神と大山祇神。それぞれ志等美神社・大河内神社と同じ祭神です。それぞれの繋がりを感じます。
小俣神社おばたじんじゃ
豊受大神宮摂社 祭神、宇賀御魂神うかのみたまのかみ
【小俣神社】 三重県伊勢市小俣町元町1072
祭神はお稲荷さんで有名な宇賀御魂神です。五穀豊穣の神です。地元では「稲女いなめさん」や「いなべの杜」と呼ばれています。社のある小俣を中心とする宮川下流が豊受大神宮の世襲神主、度会氏が開拓したことから宮川の対岸にある神宮摂社・末社が全て皇大神宮の摂社・末社である中で小俣神社は唯一、豊受大神宮の摂社です。
社殿背後の大木が枯れているのが印象的です。
小俣神社横には地元の氏神、八柱神社があります。
神社入口には草奈伎神社でも見た蕃壁が設けられています。
離宮院跡 小俣神社から西へ500m進むとあります。
離宮院は斎王(伊勢神宮に奉仕する未婚の皇女)が年に3回、伊勢神宮に奉仕する際に明和町の斎宮から出発した後に、立ち寄って宿泊する施設です。
現在は離宮院公園として整備され土塁のみ残されています。
湯田神社ゆたじんじゃ
皇大神宮摂社 祭神は二柱、大歳御祖命おおとしのみおやのみこと 御前神みまえのかみ
【湯田神社】 三重県伊勢市小俣町湯田字孤山983
地名の湯田は神田を意味する斎田に由来します。かつては皇大神宮の世襲神主荒木田氏によって開拓された神宮神田がありました。祭神はこの土地の農耕守護の神です。社殿は他の摂社・末社より大きいです。かつて社殿は二社ありましたが室町時代に退廃し江戸時代に復興した時に一社になりました。
125社めぐりの中でも緑の濃い指折りの鎮守の森です。竹も立派です。
神社前は田んぼで神主荒木田氏によって開拓された、かつての神宮神田なのかと想像が膨らみます。